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岩波書店、非正規社員を雇い止め 

岩波書店は、今年の7月21日に、岩波書店労働組合(岩波労組)に対して、図書室員との雇用契約を打ち切り、業務は他部署の社員に再配分する意向を示した。この図書室員は非正規雇用の社員であり、「雇い止め」である。岩波労組執行委員会は、以下のように述べている。

「7月から新しい執行委員会がスタートしました。「三六協定」といった大時化のなかでの出航でしたが、たちまち今度は「雇い止め」という大嵐に突入してしまいました。いつもならば「これから新しい気持ちでスタートを切り、さまざまな課題に取り組んでいくたいと思います」とご挨拶をするところですが、既にどっぷりと重い課題と取り組んでいる今期執行委員会ではあります。」(「執行委員会ニュース」第4号、2010年8月19日発行)

御用労組である岩波労組も、この図書室員が岩波労組の組合員であるため、さすがにこれには抗議している。概要については、岩波労組の渡辺尚人委員長が、全印総連東京地方連合会が発行する機関紙で述べている説明を使わせていただこう。


「岩波書店の非正規社員雇い止め
   渡辺(北部・岩波書店労組)

 岩波書店には、出版活動を支える図書室があり、そこでは1人の社員と一緒に半日勤務・単年度契約の図書室員という非正社員が1人働いている。7年前に会社が社員補充は難しいとして図書室に導入した業務委託契約者を組合の運動で直接雇用に変えさせたのが図書室員だ。

 現在の図書室員は、組合にも加入し執行委員立ち会いのもと契約更新を2回重ねながら2年と8か月働いている。均等待遇を求めて数度の賃金向上も獲得してきた。

 しかし、今週、会社は図書室員との契約を終了したいと提案してきた。図書室運営は選任社員1人と複数社員の手分けで運営したい、本人には個人面談で会社の考えを伝えた、という説明だった。        

 重ねてきた前進を吹き飛ばす提案だけに腹立たしい。組合は現在、組合との協議より先に個別交渉するとは何ごとか、組合員を本人の希望に反して雇い止めとは何ごとかと抗議し、雇用を守りながら図書室を運営する方策を協議したいと会社に申し入れている。

 会社に雇用を守る責任を果たさせることは労働組合の最大の使命だ。方針案にあるよう働く者全てを視野に入れ、安定した良質な雇用を求めていきたい。」(「印刷出版労働者」東京地連第148回臨時大会 定期大会特集号、2010年8月10日)


 この図書室員については、これまでの労使のやりとりを読む限り、その仕事ぶりについては会社も肯定的に評価しているとのことであるから、これは純然たる「合理化」である。以下の7月21日のやりとりを見てみよう。

「つぎに核心の「雇い止め」について、「編集総務に1名を増員し、Aさんを雇い止めにする、ということか」という質問に対しては「そうだ」と答えています
 さらに「3年間この会社で働いたAさんを雇い止めにする、ということを会社はどう考えているのか」と聞きましたが、「現在の会社の状況から、継続は考えられない。規模の縮小が必要だ」と答えました。」(「執行委員会ニュース」第2号、2010年7月28日発行。強調は引用者、以下同じ。人名は仮名とした)

岩波労組は、8月6日の臨時経営協議会で、会社に対して、「今回職場会への結集も大きい。非正規雇用を扱ってきた出版社の足下で非正規を切ろうとしている。これが公になればマイナスしかない。これまで労使で安心して働ける環境を築いてきたはず。再考には勇気がいるが、決断をして難局を乗り切って欲しい。」などと主張している(「執行委員会ニュース」第4号、2010年8月19日発行)。

だが、同紙によれば、会社自体が7月26日の課会で、「イメージダウンは仕方ない。長期的な判断」と述べているとのことであるから、そのような主張はあまり効果がないだろう。逆に言えばこれは、今回の措置が一般的には非正規社員の「雇い止め」と理解されることを、会社が認識していることを意味している。会社は他方で、「Aさんとの間では「契約の終了」であり、解雇ではない。契約書には1年という期限も示している」などとして、今回の措置は「雇い止め」ではない、とタテマエでは主張しているのだが(岩波労組は、「これまでの交渉・更新の経過からも7年も正社員ではなくやってきており、常用雇用とも言えるので、更新が期待されても当然」と適切に反論している)。

私は、会社が経営状況の改善のために、岩波労組と本気で対決するならば、それ自体は望ましいことだと考える。挙げだすときりがないが、現状の「労使一体」の体制の下では、編集業務は「岩波らしさ」を担保するために正社員に限り、フリー編集者との契約や外部出版社への委託を認めない(だから同じ書き手やそのグループの本ばかりが出る)とか、60歳定年退職者については希望者全員が65歳まで月額25万円で再雇用されるとか、「非常事態」下の会社としてはおおよそ理解しがたい制度が存在する。そもそも岩波労組200人の多くは、2003年6月の大幅賃下げ(会社提案は2002年10月)以前の、比較的高水準の給与体系の恩恵を享受していた人々である。

だが、仮に労使が対決すれば、2002~3年の大幅賃下げの「結果責任」として、社長の辞任をはじめ、役員体制が大幅に変わらざるを得なかったように、経営陣の責任が追及されるのは必至だろう。そういう事態を避けるために、労使の馴れ合い化がますます進んだのがこの数年間である、と私は見ている。

したがって、会社側の言う経営状況の改善云々の観点から見ても、今回の雇い止めは本質的な問題を回避した自己満足か、岩波労組の抵抗が弱そうな非正規雇用を狙い打ちにしたものとしか言いようがないものであって、単なる弱い者いじめ以外の何者でもない

そもそも図書室の非正規社員は、退職金が支給されないのは勿論のこと、必要労働時間より週1時間少なく業務時間を設定されているために、厚生年金・健康保険に加入できず、全額本人負担の国民年金・国保に加入している状況である(『活動の報告 明日の課題』岩波書店労働組合発行、2010年6月、23頁)。後者など、会社が負担を回避するために意図的に業務時間を設定しているとしか思えない。

岩波労組によれば、会社は今回の雇い止めにあたって、「Aさんの雇用を打ち切った場合の本人の生活については、「新しい生活をはじめてもらうしかない。この提案を認めて欲しい。会社は可能と判断した」と述べました」(「執行委員会ニュース」第4号)とのことである。何の根拠があって会社が「新しい生活」を「可能と判断した」のかは謎である。

今回のこの雇い止めについて注目すべきは、今年の6月1日に取締役に就任した、岡本厚『世界』編集長も決定に関わっているということである。この文章を終えるにあたっては、前回と同じ言葉を書かざるを得ないだろう。「岩波書店は、労働関係の本や記事を出し、他人に「啓蒙」する資格があるのだろうか」と。

この雇い止めの件についても、今後、継続的に取り上げていく。



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[ 2010/08/28 00:00 ] 未分類 | トラックバック(-) | コメント(-)


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