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岩波書店(岡本厚社長)に「公職選挙法違反」の疑いありとの澤藤統一郎氏の告発 

1.

現在、23日告示の都知事選に関して、さまざまな言論・運動が展開されているが、立候補の意志を表明している宇都宮健児氏に対して、弁護士の澤藤統一郎氏が自身のブログで、立候補を辞退すべきであるとの勧告記事を、昨年12月21日から長期にわたって連載している。
http://article9.jp/wordpress/

この内容自体が非常に興味深いのだが、このブログで澤藤氏の記事を取り上げる理由は、それが岩波書店とも関わっているからである。

澤藤氏は、以下のように書いている(強調は引用者、以下同じ)。

労働契約にだけ拘束される立ち場の労働者が、使用者の政治的立場を押し付けられてはならない。会社の従業員が、社長の主宰する政治団体に派遣や出向をさせられてはならないのだ。そのような事実があれば、きちんと事実関係を追跡することができるように、透明性が確保されなければならない。政治資金規正法による報告書に記載の義務がある。政治団体に派遣された「秘書」の給与相当分の報告書不記載は、単なる形式犯ではない。

問題は、この労働者の派遣先が、一般的な政治団体の活動ではなく、具体的な選挙運動となった場合のこと。このばあいには、公選法に明確に違反する犯罪「運動員買収罪」が成立する。派遣元も、派遣された労働者も、処罰対象となる。宇都宮君、君には心当たりがないか。保守陣営は汚い、違法を繰り返してきたと、我々は告発してきた。君には、その先頭に立つ資格があるか。

徳洲会は強く批判されている。君が追及するという猪瀬は、その徳洲会から金をもらっている。さて、その徳洲会とは何をしたのだろうか。

昨年12月の衆院選で、徳洲会は傘下の病院職員を鹿児島2区の選挙運動に送り込んだ。「徳洲会では選挙は業務が当たり前。ある意味、本業の医療より優先される」との職員談話も報道されている。病院職員が、労働契約上は生じ得ない選挙運動業務に動員されているのだ。

おそらくは、徳田虎雄の頭の中は、病院職員は自分の子飼い、医療をやらせようと選挙運動をやらせようと同じ賃金を支払っておけば何の問題があるものか、というものであろう。しかし、選挙運動は、無償でなくてはならない。病院職員としての賃金を支払いながら、選挙運動をさせれば、典型的な運動買収罪(公選法221条1項)に当たる。強制性が問題なのではない。無償原則違反が問題となるのだ。

そこで、脱法のためのカムフラージュが必要となる。この種のカムフラージュの常套手段は、「欠勤の扱い」か「有給休暇の取得」かのどちらか。まったくのボランティアとして自主的に、無償で選挙に参加したという形づくりが必要なのだ。徳洲会では、「欠勤による給与の減額分は賞与で加算支給するほか、1日3000円の日当が賞与に上乗せする形で支払われていた」と報道されている。つまりは、形だけの「無償の選挙運動」の体裁をとりながらも、実質において選挙運動に対価を支払うことが、犯罪とされているのだ。

徳洲会と言えども、脱法の形づくりくらいはやっている。宇都宮君、君の場合は、どうだったろう。君は、雇傭している複数の事務職員を選対事務所に派遣していなかったか。何のカムフラージュさえもなくだ。君の頭の中も、松井や徳田と同じように、自分の法律事務所の事務員なのだから、選挙運動をさせたところで何の問題もない、というものではなかったか。君の指示に従わざるを得なかった職員の方をまことに気の毒に思う。君の罪は深い。

事態を飲み込めない人のために、解説をしておこう。公職選挙法221条1項は、「当選を得若しくは得しめ又は得しめない目的をもって選挙人又は選挙運動者に対し金銭、物品その他の財産上の利益若しくは公私の職務の供与、その供与の申込み若しくは約束をし又は供応接待、その申込み若しくは約束をしたとき」というのが構成要件となっている。分かりやすく、抜き書きをすれば、「選挙運動者に対し金銭(この場合はいつものとおりの給与)の供与をしたとき」は、運動員買収として犯罪なのだ、選挙運動はあくまで無償が原則、「いつものとおり賃金は払うから、選挙事務所で働いてきてくれ」というのは、運動員に対する金銭供与として、この条文の典型行為としての犯罪に当たるのだ。

徳洲会側が運動員買収の犯罪主体となった場合は、最高刑は3年の懲役。しかし、候補者本人が犯罪主体となった場合は、「4年以下の懲役・禁錮又は100万円以下の罰金」となる。宇都宮君、君は大丈夫か。徳洲会とは規模が違う、ことはそのとおりだ。しかし、徳洲会よりも人員も金額も少ないから問題がない、ことにならないことはお分かりだろう。>
http://article9.jp/wordpress/?p=1795


<昨日お伝えした宇都宮君自身の選挙違反(運動員買収)の事実については、選挙が終わってしばらく、私は知らなかった。このことを私が知ったのは、岩波書店と熊谷伸一郎選対事務局長との関係を問題にしようとした際に、偶然宇都宮君自身から聞かされてのこと。

今年の2月のある夜。宇都宮君の法律事務所の一室で、会合があった。その席上、私は、熊谷伸一郎(岩波書店従業員)事務局長に質問した。

「あなたは、1か月も選対に詰めていたが、岩波からは有給休暇を取っていたのか」

既にこの頃は、私と他のメンバーとの亀裂は大きくなっていた。彼は、警戒してすぐには回答しようとしなかった。
「どうして、そんなことを聞くんですか」

私は、こう言った。
たとえば、東電が自分の社員を猪瀬陣営の選挙運動に派遣して働かせたとする。有給休暇を取っての純粋なボランティアならともかく、給料を支払っての派遣であれば、まさに企業ぐるみ選挙。私たちは黙っていないだろう。それが味方の陣営であれば、あるいは岩波であれば許されると言うことにはならない

このとき血相を変えんばかりの勢いで私を制したのが、高田健(許すな!憲法改悪・市民連絡会)さん。
「澤藤さん、そんなことを言うものじゃない。岩波と熊谷さんには、私たちがお願いして事務局長を引き受けてもらったんじゃないですか。その辺のところは、澤藤さんもご承知のはず。今ごろそんなことを言っちゃいけない」

助け船に勢いを得て、熊谷伸一郎事務局長(岩波)は「大丈夫ですよ。私は有給休暇をとっていましたから。それに、ウチはフレックス制ですから」と言っている。

思いがけずに、このとき続いて宇都宮君が発言した。その発言内容を明確に記憶している。
「えー澤藤さん。岩波が問題なら、ボクだっておんなじだ。ボクも、事務所の事務員を選対に派遣して選挙運動をお願いしたんだから」

これには驚いた。本当は、続けて発問したかった。いったい何人を派遣した? 誰を? いつからいつまで? 選挙運動って具体的にどんな仕事だったの? 賃金はいくら払ったの? 勤怠管理はどうしたの?…。しかし、制されて私は黙った。これ以上、彼らを刺激したら、大河(わたしの息子)と、とばっちりを受けたTさんの権利救済(名誉回復)の道は途絶えてしまうと考えてしまったからだ。

もちろん、私は、岩波書店従業員の熊谷伸一郎事務局長が、有給休暇をとって選挙運動にボランティアとして参加したとは考えていない。入社3年目の従業員が、あの時期にまるまる1か月の有給休暇が取れたはずはないからだ。また、彼が、真に有給休暇をとっていたとすれば、フレックス制に言及する必要はない。自ら有給休暇を取ってはいなかったことを自白したに等しい。なお、請負制の個人業者であればともかく、フレックスタイム制の従業員であったことが、公職選挙法違反を免責することにはならない。岡本厚岩波書店現社長も、選対メンバーのひとりである。熊谷伸一郎事務局長に便宜が図られたのであろうと考えている。

以上の経過のとおり、宇都宮君の選挙違反の事実は、彼自身の口から語られたもの。おそらくは、違法性の意識はなかったのだろう。しかし、この件での違法性の意識の欠如が故意の欠缺の理由にも責任阻却事由ともならない。犯罪の成立には何の影響も及ぼさない。>
http://article9.jp/wordpress/?p=1797

これに対して、宇都宮健児氏を支持する「人にやさしい東京をつくる会」(以下、「つくる会」と略)は、1月5日付の文書「澤藤統一郎氏の公選法違反等の主張に対する法的見解」を掲載し、澤藤氏に反論している。岩波書店に関連する箇所のみ引用する。


<澤藤氏は同ブログで、民間企業につとめながら選対の事務局長をつとめた熊谷氏について、「『 あ な た は 、1 か 月 も 選 対 に 詰 め て い た が 、…… 有 給 休 暇 を 取 っ て い た の か 』」と 問 い 詰 め 、「有給休暇を取得していた」という回答を得た経過を記したうえで、「私は、……事務局長が、有給休暇をとって選挙運動にボランティアとして参加したとは考えていない」と記載しているが、そこには何の根拠も示されていない。熊谷さんについて「入社3年目」と記載されているが誤りであり、実際には2007年に入社している。そもそも公選法が規定する「選挙期間」とは告示日以降の17日間に限定されるため、事務局長が「選挙運動にボランティアとして参加」していたのは17日間を超えることはありえない。週末や休日を含めれば十分に有給休暇で対応できる範囲内であり、また事務局長は休暇を取得しない日には勤務も行なっていた。そのような対応をしたという応答を得ているにもかかわらず、悪意ある憶測のみであたかも違法性があるかのように記すのは、会社員などの政治参加という観点からも問題である。

熊谷事務局長は、従前より都政問題についての市民活動にも参加してきた経歴を持ち、属する会社から業務命令として派遣されたものではなく、選対からの度重ねての要請により、自らの判断で事務局長の任務を引き受けたものである。澤藤氏は事実と証拠に基づかない私憤に基づく憶測から事務局長らの名誉を毀損する主張を繰り返している。

また、澤藤氏は、徳洲会が傘下の病院職員を選挙運動に送り込んだ例等を引き合いに出し、宇都宮氏が所属する法律事務所の事務員の方が、選挙事務所に自主的に出入りし、手伝いをなしたことをもって、宇都宮氏にも運動員買収があるとの主張をなしている。

法律事務所事務員は、熊谷事務局長と同様に、有給休暇によりボランティアとして参加したものであり、宇都宮氏に公職選挙法等の違反があるとの主張も全く理由がない。>
http://utsunomiyakenji.com/pdf/201401benngoshi-kennkai.pdf

澤藤氏はこの「つくる会」の批判を「およそ、説得力を欠く、「逃げ」の文章でしかない」とした上で、連載記事第17回から反論を行なっている。この澤藤氏の反論のうち、岩波書店に関連する箇所を見ておきたい。その中で澤藤氏は、徳洲会とUE社の「公職選挙法違反(運動員買収)疑い」に関して言及しているが、これらについてまず見ておく必要があるので、澤藤氏自身の文章を引用しておく。

<徳洲会事件とは何であったか。2013年9月18日付の中日新聞の記事を引用する。
「医療法人「徳洲会」グループが昨年12月の衆院選で、自民党の徳田毅衆院議員(42)=鹿児島2区=の選挙運動のために、全国から多数の職員を現地に派遣し、報酬を支払っていた疑いが強まり、東京地検特捜部は17日、公選法違反(買収)の疑いで東京都千代田区の徳洲会東京本部などを家宅捜索し、強制捜査に乗り出した。
 関係者によると、グループの系列病院に勤める医師や看護師、事務職員ら数百人が現地に派遣され、衆院が解散した昨年11月16日から投開票前日の12月15日まで、鹿児島市内や指宿(いぶすき)市、奄美市などで戸別訪問やポスター張りなどの選挙運動に従事。職員は欠勤扱いとなり給与は減額されたが、ボーナスを上乗せするなどして穴埋めする形で、事実上の報酬を支払ったとみられる。」

「石原宏高・UE社」事件も同様である。朝日の2013年3月16日付の記事。
「自民党の石原宏高衆院議員(48)=東京3区=が昨年の衆院選の際に、大手遊技機メーカー「ユニバーサルエンターテインメント」(本社・東京、UE社)の社員3人に選挙運動をさせた問題で、朝日新聞は、UE社内で作成された「3人は通常勤務扱いとし、残業代を支給する」などの記載がある内部文書を入手した。石原議員は疑惑発覚後、「有給休暇中のボランティアだった」として公職選挙法違反(運動員買収)の疑いを否定しているが、説明と矛盾する内容だ。」「『原則として通常勤務扱いで対応する』『選挙事務所にて残業(超過勤務)等が発生した場合には、残業代を支給する』などの記載がある。」

いずれも、「公職選挙法違反(運動員買収)疑い」の事件。徳洲会やUE社が選挙運動に派遣した職員に対して、給与を支払っていたことが運動員買収に当たる。それなりのカムフラージュを施したのだが、偽装のメッキが剥がれ落ちてのこと。>
http://article9.jp/wordpress/?p=1832

澤藤氏は「つくる会」の見解への批判にあたって、上の引用に続く部分を、「再掲」している。以下、澤藤氏の「つくる会」への批判のうち、岩波書店関連の箇所を引用する。


<まずは、「熊谷伸一郎さんが、フルタイムで選対事務局長の任務に就きながら、その間岩波書店から、従前同様の給与の支払いを受けていたのではないかという疑惑」についてである。やや煩瑣ではあるが、私の指摘を再掲して、「見解」が反論をなしえているかを吟味いただきたい。

「岩波書店に、(徳洲会やUE社と)同様の疑惑がある。もちろん、調査の権限をもっていない私の指摘に過ぎないのだから、疑惑にとどまる。だが、けっして根拠のない疑惑ではない。熊谷さんは、上司の岡本厚さん(現岩波書店社長)とともに、宇都宮選対の運営委員のメンバーだった。熊谷さんが短期決戦フルタイムの選対事務局長の任務を引き受けるには、当然のことながら上司である岡本厚さんの、積極的な支持があってのこと選対事務局長としての任務を遂行するために、岩波からの便宜の供与があったことの推認が可能な環境を前提にしてのこと。常識的に、岩波から熊谷事務局長に対して、積極的な選対事務遂行の指示があったものと考えられる。

昨年の2月、私の疑惑の指摘に対して、熊谷さんは、『私は有給休暇をとっていましたから。それに、ウチはフレックス(タイム)制ですから』と言っている。これだけの言では徳洲会やUE社の言い訳と変わるところがない。また、言外に、給与の支払いは受けていたことを認めたものと理解される。

真実、彼が事務局長として任務を負っていた全期間について有給休暇を取得していたのであれば、何の問題もない。しかし、それは到底信じがたい。では、フレックスタイム制の適用が弁明となるかといえば、それも無理だろう。コアタイムやフレキシブルタイムをどう設定しようと、岩波での所定時間の勤務は必要となる。フルタイムでの選挙運動事務局長職を務めながら、通常のとおりの給与の支払いを受けていれば、運動員買収(対向犯として、岩波と熊谷さんの両方に)の容疑濃厚といわねばならない。

根本的な問題は、熊谷さんが携わっていた雑誌の編集者としての職務も、選対事務局長の任務も、到底片手間ではできないということにある。両方を同時にこなすことなど、できるはずがない。彼が選対事務局長の任務について、選挙の準備期間から選挙の後始末までの間、岩波から給与を受領していたとするなら、それに対応する編集者としての労働の提供がなければならならない。それを全うしていて、選対事務局長が務まるはずはないのだ。それとも、勤務の片手間で選対事務局長の任務をこなしていたというのだろうか。それなら、事務局長人事はまことに不適切なものだったことになる。

どのような有給休暇取得状況であったか、また具体的にどのようなフレックスタイム制であったのか、さらに選挙期間中どのような岩波への出勤状況であったのか、どのように業務をこなしていたのか、知りたいと思う。労働協約、就業規則、労働契約書などを明示していただきたい。徳洲会やUE社には追及厳しく、岩波には甘くというダブルスタンダードはとるべきではないのだから」
(「その16」http://article9.jp/wordpress/?p=1832)

「見解」の主たる反論は、私の指摘には「何の根拠も示されていない」ということにある。その上で、「(熊谷)事務局長は休暇を取得しない日には勤務も行なっていた。そのような対応をしたという応答を得ている」という。宇都宮君が都知事になったとして、徳洲会や猪瀬の違法行為に対する追及はこの程度で終わることになるのだろう。こんなに露骨に身内に甘い体質では到底ダメだ。「そのような対応をしたという応答を得ている」などと言うふやけた調査で済ませる都知事候補を推薦することなどできようはずがない。

私は、宇都宮選対に違法行為があった場合のリスクを問題にしている。疑惑が立証された場合に、宇都宮君を推薦した政党や市民団体のクリーンなイメージに大きく傷がつくことになる。また、有権者に対する責任の問題も出て来る。「見解」は、説得的に疑惑はあり得ないとする論証をしなければならない。疑惑を指摘され、それを否定しようとする以上は、「疑惑のないこと」の立証責任を負担しているのだ。にもかかわらず、「見解」のこの投げやりな姿勢、自信のなさはどうしたことか。

「見解」は、「熊谷さんについて『入社3年目』と記載されているが誤りであり、実際には2007年に入社している」という。この点はおそらく私の誤りだと思うので、『入社5年目』と訂正する。ほかにも、細部で具体的な間違いがあれば、指摘に耳を傾けたい。

「見解」は、「そもそも公選法が規定する『選挙期間』とは告示日以降の17日間に限定されるため、事務局長が『選挙運動にボランティアとして参加』していたのは17日間を超えることはありえない」という。信じがたい稚拙な論理のすり替え。こんな小細工が却って疑惑を深める。その上、法解釈としても明らかに間違っている。

私は有給休暇の取得実態を問題にしている。いったい、熊谷さんには、当時何日分の有給休暇が残っていて、選対事務局長としてフルタイム稼働したほぼ1か月間に何日を消化したのだろうか。選対事務局長としてフルタイム稼働中の有給休暇の取得実態を問題にしているのに、敢えて選挙期間の17日間に限定して問題を考察しなければならない道理はない。そのように限定する予防的な姿勢が、「1か月全期間を問題にされては都合が悪い」という疑惑を生むことになる。

また、法的にも、運動員買収罪の成立は選挙期間中の17日間に限定されるという主張は明らかな間違いである。宇都宮陣営の弁護士がこんなことを言えば、徳洲会もUE社も大喜びだろう。

私は、公職選挙法221条1項1号違反を指摘している。買収の対象となる行為は、選挙運動の定義よりはるかに広い。また、買収・供応の犯罪は、選挙期間中に限定して成立するものではない。同条の文言からも、犯罪成立の時期について何の言及もなく選挙期間に限定されるものではない。立候補届出前の運動員の行為に対する対価の支払いにつき、本罪が成立するとした最高裁判例(1955年7月22日)もある。

「見解」は、「週末や休日を含めれば十分に有給休暇で対応できる範囲内であり、また事務局長は休暇を取得しない日には勤務も行なっていた」と言うが、これは明らかな誤謬の法解釈を前提とした不十分な調査の結論である。これで、疑惑が解消になるとは、起案者自身も考えているはずはない。

「見解」の起案者は、再度の調査をなすべきである。

そして、具体的にどのような有給休暇取得状況であったか、また岩波にはフレックスタイム制が存在するのか、存在するとしてどのようなフレックスタイム制であったのか、熊谷さんにはいつからどのようなフレックスタイム制が適用になっていたのか、さらに事務局就任以後の全期間についてどのような岩波への出勤状況であったのか、どのように岩波の業務をこなしていたのか。資料を添えて、明確にしなければならない。そうでなければ疑惑を解消したとは到底言えない。

さらに、「選対からの度重ねての要請により…任務を引き受けた」という「見解」の指摘が見逃せない。「法的見解」とされているから敢えて述べるが、岩波書店の熊谷さんへの運動員買収の疑惑は、「事務局長就任の動機が選対からの要請によるものであったか否か」とはまったく無関係である。選対が運動員買収を要請した事実のあろうはずのないことはさて措くとして、「見解」は何を論じているのかを見失っている。再三言っているとおり、私が指摘し問題にしているのは、公職選挙法上の犯罪成立の疑惑と、疑惑が立証された場合の種々のリスクなのである。「会社員などの政治参加という観点からも問題」などという立法論のレベルでの論争でも、市民感情における可非難性の有無の問題でもない。現行公選法に照らして、犯罪成立のおそれの有無を論じているのだ。「見解」の揺れる視座は、犯罪不成立と言い切ることに自信のないことを表白している。

「澤藤氏は事実と証拠に基づかない私憤に基づく憶測から事務局長らの名誉を毀損する主張を繰り返している」などと言うようでは、法的見解における弁明の放棄と解さざるを得ない。>
http://article9.jp/wordpress/?p=1848


2.

上記の記述をもとに、以下、若干の私見を述べることとする。

まず、上で引用したように、「人にやさしい東京をつくる会」は、「澤藤氏は事実と証拠に基づかない私憤に基づく憶測から事務局長らの名誉を毀損する主張を繰り返している」と主張している。しかし、澤藤氏が、熊谷が「世界」編集部員と事務局長を同時にこなすことの可能性について疑問を持つこと自体は自然なことである。

私の1年足らずの経験から言えば、「世界」編集部は深夜残業がほぼ恒常化しているほどの激務の職場であり(会社は、この期間の私への時間外労働分の支払いを、他の社員と異なり、拒否している)、長時間労働が慢性化している職場である。昨年、岩波書店労働組合「世界」編集部支部からの要請を受け、岩波書店労働組合が会社と長い間交渉し、「世界」編集部での校了作業日の深夜業務は、通常の深夜残業への割増額よりも多い割増賃金が支払われることになったが、これは「世界」編集部での仕事が相変わらず激務であることを示唆している。「つくる会」は、「世界」編集部の熊谷は有給休暇と「休暇を取得しない日」での「勤務」で対応したと主張しているが、この主張は、上記の事情から考えれば、かなりの日数の有給休暇が使われていることを前提としないと成り立たないと思われる。

私は岩波書店が「つくる会」と同じ認識であるならば(そして同じ認識であると思われるが)、なぜ澤藤氏の疑問に対してまともに答えようとしないのか、という強い疑問を持っている。なぜならば、もし本当に「つくる会」の主張どおりならば、澤藤氏への疑問への反論はそれほど難しくないと思われるからである。

岩波書店の全社員の出勤・退勤・外出などの勤務管理は、タイムカードに基づいて行なわれており、記録漏れがあった場合でも、管理者(上司)がチェックして該当者に改めて申請させるなどして、不備がないように管理されている。この勤務管理の記録は、各人がウェブ上でログインして確認することができ(上司を含めた管理者も確認可能)、有給休暇の記録も含めて、過去の勤務の状態を一目で確認することができる。この勤務管理については、もちろん裁量制(「フレックス制」)の職務に対しても行なわれている。そもそもこの勤務管理の導入自体が、勤務実態の把握により長時間労働の問題を解決する、という点を大きな理由(建前)として行なわれたものである。

岩波書店が運動員買収を行なっており、公職選挙法221条1項1号に違反しているとの澤藤氏の批判は、岩波書店にとって捨てておけない性格のもののはずである。また、「つくる会」は、澤藤氏の批判が熊谷の名誉を毀損していると主張している。岩波書店は、会社および社員の名誉を保護・回復する義務がある。「つくる会」の主張が真実であることを前提とすれば、熊谷の勤務管理データの記録等は澤藤氏の主張に対する極めて有力な反証となるのであるから、岩波書店は率先して澤藤氏に情報を開示し、会社および社員に対する嫌疑を晴らすべきである。5分もあればアクセスと印刷は終わるはずである。なぜそれをしないのだろうか。

また、「つくる会」の主張から、もう一つの重要な論点が発生している。

「つくる会」は、「熊谷事務局長は、従前より都政問題についての市民活動にも参加してきた経歴を持ち、属する会社から業務命令として派遣されたものではなく、選対からの度重ねての要請により、自らの判断で事務局長の任務を引き受けたものである」と主張している。ところで「選対」に関して、澤藤氏は、「岡本厚岩波書店現社長も、選対メンバーのひとりである。熊谷伸一郎事務局長に便宜が図られたのであろうと考えている」と述べている。「つくる会」は、熊谷が入社3年目ではなく入社5年目であると澤藤氏の主張を訂正しておきながら、岡本社長(2012年時点では取締役。2013年5月31日、社長就任)が選対メンバーの一人である(であった)との主張に関しては沈黙している。岡本社長が選対メンバーの一人である(であった)と見なしてもよいと思われる。

そうすると、「つくる会」の説明に従えば、2012年時点で取締役であった岡本社長は、役員であるにもかかわらず、「選対」として、社員(しかも元の直属の部下)に対して、有給休暇を取得して、また長時間労働が問題となっている職場であるにもかかわらず私的な時間を使って、自分が支持している政治運動を行なうよう命令した、ということになるのではないか。しかも、「選対からの度重ねての要請により」との「つくる会」の説明に基づけば、熊谷が引き受けることを渋っている(迷っている)にもかかわらず、岡本社長は事務局長を引き受けるよう「度重ねての要請」を行ない、ついに受け入れさせたということになるのではないか。そうだとすれば、これは前代未聞の事態である。

「つくる会」の説明を読んだ読者は、岩波書店は、役員が社員に対して、有給休暇を使わせて、自己の信じる政治運動を行なわせることが容認されている会社である、という認識を持ちかねないのである。このような「つくる会」の説明は、岩波書店の名誉を大きく傷つけるものとなりかねないので、岡本社長はこの件に関して、事実関係を公的に説明すべきである。

常識的に考えれば、役員が、有給休暇を使って会社を休んで政治運動をやれ、などと社員に対して言うことはありえないことである。澤藤氏が、岡本社長が熊谷に便宜を図ったのだろうと推測したのも当然である。長年「世界」編集長であり、熊谷の上司であった岡本社長が、「清宮さん(「世界」編集長)には僕が話しておく。有給休暇は使わなくていいし、勤務時間と重なってもいいことにする」とでも言わない限り、普通の社員ならば、引き受けられないだろう。もちろんこの場合には、澤藤氏が言うように違法となると思われる。


3.

上記の諸点に関して、当事者でもある岡本社長は、事態が岩波書店および社員の名誉を傷付ける性格のものである以上、公的に説明を行なうべきである。

また、澤藤氏の記述に従えば、岡本社長は現在でも宇都宮氏の選対メンバーの一員であるようである。取締役でありながら特定の選挙候補者の選対を務めていた、という事実自体が大きな問題であるが、社長でありながら特定の選挙候補者の選対を務めるということが、株式会社の社長として、しかも言論機関の企業として、あってはならないことは言うまでもない。前回記事で、岡本社長が「岩波書店社長」名義で、保坂展人・世田谷区長の政治資金パーティーの呼びかけ人に名を連ねていることについて指摘した。

私はそこで「岩波書店社長」としてその種の政治活動を行なうことが、株式会社岩波書店の持つイメージがその種の政治活動に利用されることを意味するのであって、会社の私物化となりかねないと述べた。岡本社長は、社長はその種の政治活動を行なうべきでない、という認識を全く持っていないようであるから、澤藤氏の記述から、現在でも岡本社長は宇都宮氏の選対メンバーの一員なのではないか、との強い疑いを持たざるを得ないのである。この件に関しても、岡本社長の公的な説明を求める。

岩波書店の小松代和夫総務部長が、公然と嘘をついていたことは既に指摘したとおりであるが(「岩波書店による、嘘と隠蔽に基づいた嫌がらせ・差別行為」参照)、縁故採用が問題化した際、岩波書店は、実態と完全に矛盾した弁明を行なっており(「メディア報道における岩波書店の弁明への疑問と批判」、「声明:岩波書店の縁故採用に改めて抗議する」 参照)、また、違反行為に対する労働基準監督署による行政指導の際にも、本来提出すべき労働時間管理記録の存在を隠蔽した過去がある(「岩波書店、労働時間管理記録を労基署に対して隠蔽」
参照)。老舗旅館や老舗企業、有名百貨店の腐敗と事故が話題になったが、それと同様の企業体質を持っているのではないかと私は考えている。

今回も、法律違反を犯したという事態を回避するために、何らかの嘘・隠蔽を行なっているのではないか、との疑いが読者には生じるかもしれない。このような疑いを読者に対して持たせないためにも、岡本社長および岩波書店は上記の諸点に関して、積極的に情報を開示し、公的な説明を行なうべきである。

(金光翔)
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[ 2014/01/15 23:15 ] 未分類 | トラックバック(-) | コメント(-)


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